岡山 西川緑道公園 精神科診療所こらーる岡山閉院へ

岡山市北区岩田町の精神科診療所「こらーる岡山」が15日、閉院する。所長の山本昌知医師(80)は岡山県精神保健福祉センター所長を25年間務め、国内で3カ所目の社会復帰施設を造るなど患者を地域で支える体制を構築。入院中心だった精神科医療の転換に、ほぼ半世紀にわたり尽くしてきた。高齢により第一線からは退くが、足跡は着実に地域に根付いている。 「病気はあなたのほんの一部。あんまりとらわれちゃいかんよ」 10日、こらーる岡山で山本医師の言葉に女性(63)=赤磐市=はうなずいた。1987年にうつ病を発病後、入退院を繰り返していたが、山本医師の元へ通うようになってからは自宅でずっと暮らしている。 「しんどい時に先生に電話したら、すぐ駆け付けてくれた」と女性。山本医師の勧めで自らの体験を語る活動も始め、前向きに生きられるようになったと感じている。 山本医師が県精神衛生センター(現・県精神保健福祉センター)所長に就任した72年当時、自身を含め職員はわずか4人。その後、徐々に増やして外来や訪問診療を本格化させた。デイケアも開設し、自宅に引きこもりがちだった患者の居場所づくりに取り組んだ。 76年には社会復帰施設・県立内尾センター(岡山市南区内尾)を開設。デイケアのほか、患者が苦しい時に一時宿泊して休める施設を整備した。県内を4地区に分け、4人の医師がそれぞれ訪問診療する体制も整えた。 「地域で患者を支える拠点がなかった時代に、専門職を育てながら入院に頼らない支援を実践した」。元県衛生部長の大森文太郎万成病院名誉院長(82)は言う。内尾センターは2006年に廃止されたが、主な活動はNPO法人県精神障害者家族会連合会が受け継いでいる。 山本医師の原点は62年、駆け出しで赴任した病院での体験だ。患者たちが治療らしい治療を受けないまま何十年も入院。病棟は無断離院を防ぐため、出入り口には全て鍵がかけられていた。 「人として尊重される環境ではなかった」と山本医師。6年後、再びその病院に戻ると病棟の鍵を外し、退院に力を注いだ。だが、在宅を支える体制がないため、患者はすぐ再入院してくる。「キャッチャーのいない所へボールを投げ込むようだった」と振り返る。 97年に精神保健福祉センターを退職後、古民家風の診療所跡を借り、こらーるを開設。作業所を併設するとともに、診療所の運営委員会に患者を入れたり、患者が体験を語る活動を始めたりして「患者が主役の場」づくりに取り組んだ。2008年にはこらーるが舞台のドキュメンタリー映画「精神」(想田和弘監督)が公開され、注目を集めた。 閉院後、7月1日からは精神科の「大和診療所」(岡山市中区江崎)が同じ建物で診療し、山本医師も当面、非常勤で患者に向き合う。診療とは別に患者が自由に集える場も考案中で「病を抱えても孤立せず、その人らしく生きられる地域づくりをしたい」と話している。

参考
ドキュメンタリー映画「精神」(想田和弘監督)
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NHK岡山   「こらーる岡山」と「大和診療所」の放送があった!

0615
水曜 

NHK総合1
 午後6時10分~ 午後7時00分
もぎたて! ▽名物診療所が閉院 ▽岡大農場で育てた千屋牛店頭に

▽名物診療所が閉院・引退する医師の思い ▽岡大農場で育てた千屋牛店頭に ▽撮りたて! ▽岡山の最新ニュース ▽気象情報 【キャスター】塩田慎二,高橋尚子

▽長年にわたって精神疾患の患者を地域で診療しドキュメンタリー映画の舞台にもなった岡山市の診療所が15日、閉院します。最後の診療の様子と若手に引き継いで一線を退くことになった80歳の医師の思いをお伝えします。▽インタビューコーナー「塩田ンち」は15日から岡山市内で始まる写真展についてです。悩みを抱える人を食などでもてなし心に寄り添ってきた東北・青森の佐藤初女さんを追い続けたこの写真展。

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0608
水曜 

NHK総合1
 午後6時10分~ 午後7時00分
もぎたて! ▽精神医療 岡山の医師が先進療法 ▽18歳選挙権施行へ


▽精神医療 岡山の医師が先進療法 ▽18歳選挙権施行へ 専門家に課題を聞く ▽撮りたて! ▽岡山の最新ニュース ▽気象情報 【キャスター】塩田慎二,大西遥

▽入院による治療から地域への移行が課題となっている精神医療の分野で患者の生活の場に乗り出して総合的に支援する岡山市の診療所の取り組みが注目されています。「アクト(ACT)」と呼ばれるこの取り組み。その現場を追いました。▽インタビューコーナー塩田ンち、今回の参議院選挙から選挙権を得られる年齢が18歳以上になります。18歳選挙権に学校は、家庭はどう向き合えばいいのか。岡山大学大学院の教授に伺います。


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